研究課題/領域番号 |
22520813
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
小田 博志 北海道大学, 文学研究科, 准教授 (30333579)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 歴史和解 / 平和研究 / 植民地主義 / ドイツ / アフリカ |
研究概要 |
9月に実施したドイツでの現地調査では、植民地支配の記憶と現代社会とを媒介する実践現場の訪問、および関係者への聞き取りを行った。ハンブルクでの特別展“freedomroads!”は、この都市に刻まれた植民地主義の歴史を振り返るものであったが、その企画をベルリンのNGOと共に在独のフィンランド系アーティストが進めている点が特徴的であった。ベルリン医大で植民地期の人骨標本の調査・返還を担当するCharite Human Remains Projectのスタッフからは、ナミビアへの遺骨返還のプロセスの情報を得た。そしてナミビア(旧ドイツ領南西アフリカ)での植民地戦争に従軍した人物Paul Robienの子孫から資料提供を受けた。これらの知見と資料は、これまで進めてきた調査を補い、前進させる上で意義のあるものとなった。 この研究プロジェクトの成果の一旦を、論文「ハンス・パーシェと日本―国境を越えたつながりの物語」(『日独交流150年の軌跡』所収)、学会発表「遺骨が媒介するポストコロニアルな関係性――ナミビアとドイツを事例として」(日本平和学会2013年度秋季研究集会)で公表した。平和・和解研究の理論枠組みについて編著『平和の人類学』所収の2論文で提示した。 以上の実証的資料と理論的分析とを併せて、本研究課題の成果となる論文の構想を進めてきた。その問題設定に関わって、かつての植民地支配が「自然民族/文化民族」の二分法を前提に行われたことから、「自然/文化」のカテゴリーをつなぎ直す「媒介」が重要であることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね計画通りの成果を上げることができている。本研究課題のテーマ「植民地後和解」に関わる事例の調査ならびに理論的考察共に進展しており、論文執筆のため補足的な調査を残す段階に達している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の最終年度において、研究成果を取りまとめ、論文を執筆するために必要な資料の収集と分析を進める。ドイツで事例に関わる詳細な情報を集めるための現地調査を実施して、「自然/文化」、「アフリカ/ヨーロッパ」、「植民地/宗主国」、「植民地の過去/植民地後の現代」の分割を「媒介」する実践と場のあり方を分析、その結果をヨーロッパ社会人類学会の学会誌Social Anthropologyに投稿する。そしてこの研究成果を受けて、「自然/文化」の関係性の変動を、脱植民地化という歴史的プロセスの中で明らかにする、新たな研究プロジェクトの構想につなげる。
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