研究課題/領域番号 |
22520815
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
和田 健 千葉大学, 国際教育センター, 准教授 (20292485)
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キーワード | 農山漁村経済更生運動 / 生活改善 / ムラ / 更生指定町村 / 戦時体制下 / 民俗 |
研究概要 |
本研究は、戦時体制下に入る1930年代を中心に、農山漁村経済更生運動における指定町村の更生計画書を考察し、この時期の生活習俗に関わる指針、目標の意味を探ることを目的とした。 平成23年度は、特に更生運動第1期にあたる昭和7年からの5年間の茨城県内更生指定村の更生計画書に記載された生活改善に関わる事項を総合して分析し、学会発表および研究論文において報告を行った。あわせて長野県内の更生指定村における満州分村計画を実施した更生指定町村を対象に、その概要と経緯そして分村後の生活習俗の実態について予備的調査を行った。 本研究では昭和10年代にさしかかる時期における生活習俗に対し、公的組織より指針として出されたことの意味について検討を行った。たとえば冠婚葬祭における冗費の廃止、入退営時における贈答慣行の廃止、そして寄合における時間の励行など、更生計画書からは、生活習俗に対してより具体的な改善目標を渇げ、行政村単位に統一化された指針が出されている点がうかがえる。いわゆる「模範的な町村」であるあり方を示すことで、行政村のもとその下部組織であるムラ組織が系統化される流れを読み取ることができる。たとえば冠婚葬祭に関わる冗費を防ぐため、葬式の際使用する道具は、膳椀小屋をムラ単位で共有することで効率的に管理することや、葬式の運営や出席も明確な近隣関係の中で行うよう取り決めが文書化されるなど、各指定町村で目標が明文化されている。もちろんスローガン以上のものはなく、かけ声倒れであろうことも推測できる事例も見かけたが、.少なくともこれまで字や組合など比較的各ムラで独自に慣習化され伝承されていたことが、何かしら行政村単位で系統だった生活習俗(いわゆる民俗的慣行)に整えられていく契機になったことは読み取ることができるのである。 以上あげた成果は、平成22年度から引き続き行ってきたものである。引き続き来年度にかけては、23年度に資料化できなかった長野県における更生指定村の生活改善について系統立てた項目の整理をつける予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は更生指定町村の生活改善指針を資料化し、対象とする指定町村の聞き取り調査を計画している。 長野県に関しては23年度(平成24年1月から3月)に行う予定であったが、所属部局の本務(外部評価委員会の資料作成と準備)におわれ、十分に取材準備ができず予備調査にとどまってしまった。
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今後の研究の推進方策 |
対象としている更生指定村の計画書をデータ分析する。 現地調査の時間を多く割くようにして、現在行われている生活習俗の実態について、あわせて検討対象としてすすめる。
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