研究概要 |
今年度は、モンゴルで行われている「コミュニティを基盤とした自然資源管理」によるプロジェクトに関する報告・研究をまとめるとともに、「コミュニティを基盤とした自然資源管理」アプローチ一般に関する、またE.Ostrom(1990,Governing the Commons, Cambridge Univ. Press)などコモンズ論、とくにコモンズを持続的に管理するのに必要な条件等に関する研究について、モンゴルの移動牧畜にもあてはまるか検討した。アフリカの乾燥地帯の牧畜と同様に、牧草などの資源が希薄で空間的かつ時間的に偏在するという性質のため、Ostromらのいう条件のあるものは成立しがたいと考えられるからである。 現地調査については、ホブド県ドート郡において、2010年11月と2011年3月に行った。 11月の調査では、10世帯あまりの牧畜民世帯を訪問し、移動・生計などの基本的データを集めるとともに、"Green Gold"プロジェクトに対する評価を聞いた。その結果、プロジェクト報告書での評価とはことなり、おおくの牧畜民がプロジェクトの目標・実現性・実際の運営に批判的であることがわかった。一方、プロジェクト・コーディネータへのインタビューでは、その批判のすくなくともある部分は、事実をかならずしも反映していないこともわかった。 質問者だけでなく同行者もふくめた質問する側の属性、質問される側の牧畜民やプロジェクトスタッフの属性、質問側と質問される側の間の親族関係などの関係性、質問の仕方その「場」の条件によって、回答も変わってくるということだが、逆にそのようなネットワークや社会的文脈を詳しくたどることによって、プロジェクトに対する現地の人間の評価がどのように形成されるかやそれがプロジェクトの実施にどのような影響を与えるかを明らかにすることが可能となる。今後の分析や調査の課題としたい。
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