研究課題/領域番号 |
22520817
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
上村 明 東京外国語大学, 外国語学部, 研究員 (90376830)
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キーワード | 移動牧畜 / コミュニティ / コモンズ / モンゴル / 開発援助 |
研究概要 |
今年度は、昨年度までの研究をまとめ、論文や学会発表として公表した。また、ホブド県とトゥブ県で現地調査をおこなった。とくに、牧夫を雇用しての牧畜経営について聞き取り調査をおこない、そのような雇用関係がモンゴルにおける牧畜全体にひろがることのないことを確認し、その理由を考察した。 1.研究成果の公表2011年8月モンゴル国ウランバートル市で行なわれた3つの国際学会で、土地利用や景観についての発表をおこなった。そのうち2つは、地図と景観認識が主たるテーマの発表であったが、本科研でえられた牧地利用についての知見にもとづいている。もうひとつは、本科研の重要な研究課題のひとつである、「コミュニティを基盤とした自然資源管理」アプローチによる国際援助プロジェクトを、現場の聞き取り調査によって批判する発表であった。Springerから出版される図書に執筆した章は、本科研発想の基本的な考え方にもとづくものである。 2.現地調査2011年9月にトゥブ県ウンドゥルシレート郡、2012年3月にホブド県で現地調査をおこなった。牧畜民世帯の移動・生計についての基本的データをアンケート調査するとともに、家畜を委託されていたり、牧夫を雇っている世帯にインタビューをおこなった。市場経済の浸透によって、そのような社会関係がひろく形成される可能性も考えられるが、調査の結果、現在のモンゴル国の牧畜の状況のもとでは、牧夫の調達や勤務管理にかかるコストがおおきく、牧畜民社会一般でおおきなな位置を占めることはないだろうことがわかった。 以上、今年度の研究では、国際援助プロジェクトがモンゴル国における牧畜社会ネットワークに及ぼす影響についてさらに考察をすすめるとともに、家畜委託や牧夫雇用関係についても調査と考察をおこなった。これらの研究は、モンゴル国の将来の牧畜のあり方を予想する上で重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
社会ネットワークについての基本的な記述がまだ不足している。とくに、牧畜の移動における移動先の選定や交渉の過程で、社会ネットワークがどのように利用されているか、民族誌的記述をおこなう必要がある。また、90年代からの冬春営地の保有権設定の過程、および保有権の設定が翻って社会ネットワークに与えた影響についてもさらに詳しく検討する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
最優先の課題として、移動牧畜での移動先の選定および移動の際の交渉において、社会ネットワークがどのように利用されているか、民族誌的記述をおこなう。
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