研究概要 |
[研究の目的] 本研究は,申請者が1980年代から継続的に調査を行ってきた米国の2地域において,1990年代後半から2000年代に顕著に見られる高齢者用住環境の多様化に着目し,住環境選択を中心とした高齢者世代のライフデザインの変化を,当該地域の福祉政策や,地域社会の文化的・社会的変化の文脈の中で明らかにし,さらに,日本の状況との比較によってアメリカ文化・社会の特性を明らかにすることを目的とする。 [平成23年度の調査] (1)米国西部カリフォルニア州サンフランシスコ近郊とウィスコンシン州スティーブンス・ポイント市における夏季(2週間)の現地調査を行った。 (a)前回調査を行った当該地域の福祉施設,教育機関等で,地域社会の変化について,聞き取り調査ならびに資料収集を行った。 (b)老後の住環境の選択肢とそれぞれのメリット・デメリットについて高齢者センター等で担当者に聞き取り調査を行った。 (c)ウィスコンシン州の調査地で増加しているモン(Hmong)の人々の高齢者のケアの仕方について,介護サービス事業所で参与観察と聞き取り調査を行った。 (2)比較対照として,日本国内の高齢者施設の担当者に参与観察と聞き取り調査を行った。 [成果] 今年度の調査から,高齢者層「Old, Old generation(85歳以上)」「Baby Boomers(65歳前後)」とその中間の「Middle Generation(75歳前後)」の価値観やライフデザインの多様性が重要であることがわかった。 なお,調査結果の一部を国立民族学博物館主催の国際シンポジウム「エイジング:多彩な文化を生きる」で発表するとともに,全体討論のコメンテーターを務めた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,アメリカ人高齢者世代の中に見られる年齢区分による多様性や,「モン(Hmong)の人々と,ヨーロッパ系アメリカ人の高齢者ケアの類似性と相違性など,さらにきめ細かく見ていく必要がある。また,日本との比較についてもさらに研究を進めたい。
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