本年度は、日本における調査準備をへて、佐藤・幅崎ともに各々のフィールドにおける現地調査を開始した。 貧困層を担当する佐藤は、既にある程度のコンタクトあるいは情報蓄積のあるフィールド(家事労働従事者女性、建築労働従事者女性)における調査活動を継続するとともに、来年度の調査に向けて、より組織的で豊かな資料蓄積に向けて採用する方途を吟味した。また、主ターゲット(貧困層/労働者階級)に照準しつつも、比較検討材料を獲得して視野を拡大することにも留意し、調査対象の幅を広げる地歩を築いた。 中間層を担当する幅崎は、民主化・経済開放以降、カトマンズ近郊で開発の進む新興住宅街の中でも「コロニー」と呼ばれる住宅ディベロッパーによる分譲建売住宅集合に着目し、うち一つのコロニーにおいて全戸数調査を行った。民族・家族構成・居住歴・私有財産等の基礎データ、コロニーに移住してきた経緯、コロニー内の活動、家計運営、日々の行動、および周辺地域住民とコロニーとの交流等について聴きとるとともに、参与観察も行った。その結果、雑多なカースト・民族からなる(とはいえ、そのほとんどは高カーストとネワールで占められる)住民の、「近代的」アメニティを装備しつつ家事労働者による家事サービスを享受する生活環境や、本人達の「ミドル・クラス」意識と周辺住民のコロニー住民認識(「お金持ち」)のギャップなどが浮かび上がってきた。
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