「インドネシアのアブラヤシ開発をめぐる土地紛争の研究」という課題の下、以下のような研究活動を行った。 1 インドネシアでのフィールドワーク 過去インドネシアの土地紛争の研究を行ってきたが、その延長上にアブラヤシ開発をめぐる土地紛争の研究を集中的に行った。フィールドとして、長く研究を続けてきた西スマトラ州西パサマン県を選んだ。西スマトラ州の場合、アブラヤシ農園として利用されるのは、ミカンカバウ母系制を支えるナガリ(母系慣習法村)の共有地が多い。この利用のためには、村全体の同意が必要であるのだが、開発を急ぐ村の指導者と外部の県、州という行政と資金を持った企業が結託をして、村の多くの成員には十分な説明を行わず、開発を強行するというケースが多数ある。また、開発の条件として村の共有地の配分でも問題がある。企業側は自分たちに有利なように、村に提示した最初の条件を順守することは少なく、それも紛争の要因になっている。さらに、農園内の労働者のハイアラーキーも問題であることが分かった。地元の人間を雇用することは少なく、外部の移住者を多数使う。こうした人々は現地では根なし草で、勢い会社に忠誠を誓うことが多く、地元の反対派への暴力の温床となっている。 今後「インドネシア経済回廊」構想が地域社会にどのような影響を及ぼすかを研究しようと考えていて、北スマトラ州でのアブラヤシ開発と経済回廊構構想の関係について研究を開始した。 2 研究成果の発表 京都大学を中心に行われている「アブラヤシ研究会」に参加し、意見交換を行い、新しい情報を得ている。また、そこで実際に発表も行った。さらに、著書の刊行や論文を執筆し、成果を公表している。
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