日本の高齢社会で老い、看取り、死の構築は二極化していることが明らかになった。一つは、老いと死は待つべきプロセスというよりは自分でデザインする“終活”であることが広く認識されるようになった。家族葬や自然葬を選択できる社会では、「自分らしい死」が目指されるが、それが個人化に拍車をかけている。主体的な選択は伝統的な束縛からの解放になるが、反面、迷いや葛藤、苦悩を生み出すことにもなる。二つ目は、東日本大震災を契機に伝統的な葬儀や家族や地域のつながりが再評価され、在宅医療を可能にするケアのあり方が模索されている。しかし、看取り文化を失った多くの人にとって在宅での看取りは不安を抱かせている。
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