2010年度の目標は、1)前期:1920年代後半のモースの主要業績の検討と翻訳を進め『贈与論』の新訳を完成する。2)後期:『供犠論』の検討を中心とする。共同研究者による新訳を完成し、1899年から1904年までのモースの業績を翻訳し、その学的背景を明らかにする。この間、同時並行するフランスにおけるモース再評価の動向(MAUSSグループ)の調査および、フランスにおける研究者との交流もおこなう、というものであった。成果は以下のとおり。1)代表者自身によるモースの主著『贈与論』の新訳を進めた。この著作では古代ローマ私法が重要な検討対象となっている。基礎的な学習をおこなったことは当然として、大阪大学法学研究科の林智良教授からの教示を仰いで訳語の確定を進めた。2)上記MAUSSのリーダーであるアラン・カイエ、パリ第十大学(ナンテール)教授とは、2010年2月、東京外国語大学西谷修教授が東京日仏会館で主催した研究集会に参加して意見交換する機会をもったが、7月の再来日の際に立命館大学に招聘し公開研究会をおこない、MAUSSの動向の簡潔な提起と、MAUSS運動と関連する主題で研究を進める院生との討議の機会を設け、研究交流をおこなった。3)共同研究者たちとはすでに、2009年12月から2010年前期にかけて平凡社の『月刊百科』に「起点としてのモース」という総題で研究の中間報告を連載したが、これらのエッセーをもとに、『マルセル・モースの世界』と題した平凡社新書の論文集を刊行する準備を進めた。この論集は当初、2010年度内刊行予定だったが、諸般の事情から2010年4月、さらに5月に刊行が延期となったが5月13日に刊行された
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