インドネシア科学院(LIPI)の協力を得て、インドネシア政府調査技術局(RISTEK)の調査許可を取得し、2010年11月2日~12月23日にインドネシアに赴き、東ヌサトゥンガラ州東スンバ県及び西ジャワ州カラワン県において文化人類学的調査を実施した。東スンバ県にあるウィラ・ワチャナ・キリスト教高等経済学校(STIE)の協力によりハハル郡カダハン村とウンガ村において合計100世帯を対象として、社会変動下の農村社会における家族の生存戦略を解明するために、世帯構成・学歴・職業・移動・収入・支出などに関する世帯調査を実施した。ハハル郡は貧困地域として知られていて、世帯調査データから、農業の生産性が低く、また現金収入の手段が限られているなどスンバ独自の貧困に関する具体的な状況が明らかになった。東ヌサトゥンガラ州の諸社会に関する文化人類学的な調査研究はこれまでに数多くあるが、経済面も対象に含めた世帯調査は稀であり、その点で貴重なデータが得られた。また、中部ジャワ州のサラティガに赴き、サティア・ワチャナ大学のスンバ島出身の学生・教員を対象とした聞取り調査も実施した。かれらがどのような親族を頼って、スンバ島外の大学に進学したのか、その実態の一端が明らかになった。これはスンバ人の親族ネットワークを研究する上で重要な資料となる。スンバ調査とともに、平成23年度に実施予定の文化人類学的な調査に備えて、西ジャワ州カラワン県において農村社会の家族に関する予備的な調査を実施した。とくにサウジアラビアなど海外に出た労働者と家族との関係について調査した。
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