研究課題/領域番号 |
22520837
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研究機関 | 桃山学院大学 |
研究代表者 |
小池 誠 桃山学院大学, 国際教養学部, 教授 (00221953)
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キーワード | 文化人類学 / 家族 / 親族 / インドネシア / 社会変動 / 移住労働者 / 農村社会 / 生存戦略 |
研究概要 |
平成23年度は、合計三回のインドネシア調査を実施した。交付申請書の「研究の目的」と「研究実施計画」に記載した東スンバ県パフンガ・ロドゥ郡カリウダ村における生計・学歴・職業・移動等に関する世帯調査は、桃山学院大学特定個人研究費を充てて実施したため、実施計画を少し変更し、これまで西ジャワ州カラワン県と東ヌサトゥンガラ州東スンバ県で進めてきた家族と親族の変化に関する研究の補足調査および移住労働者と家族との関係に焦点を当て、インドネシアにおける文化人類学的調査を進めた。 平成23年5月2~11日には、ジャカルタの中央統計局においてインドネシアの世帯経済と貧困、海外移住労働に関する統計資料を収集した。その後、カラワン県ラワムルタ郡で海外移住労働者とその家族について聞取り調査を実施した。9月7~17日には、ジャカルタの中央統計局においては引き続き統計資料を収集し、またカラワン県チラマヤ・クロン郡の、海外に多くの移住労働者を送り出している村において移住労働者とその家族に関する聞取り調査を実施した。平成24年3月18日~30日には、東スンバ県ハハル郡において家族と親族に関する補足調査を実施し、またバリ島でバリ在住のスンバ人に関する調査を実施した。 本年度の調査によって、とくに次の二点が明らかになった。移住労働者の増加は、インドネシアの農村社会の変動を考える上で、重要な問題である。 1カラワン県の水田を所有する農民が少ない貧困地域では、海外に女性の移住労働者(家事労働者)を送り出すことが当たり前になり、それが世帯の生存戦略に深く組み込まれている。妻/母親が長期間海外に働きに出ることに伴い、妻方の祖母が孫の養育に大きく関わるようになっている。 2スンバ人は移動性に乏しい民族であったが、近年バリ島に働きに出る人(女性はおもに家事労働者)が増えている。ただし、カラワン県の事例と比べて、移住労働と世帯の家計との結びつきは強くない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書の「研究の目的」に記載した東スンバ県パフンガ・ロドゥ郡における調査は、桃山学院大学特定個人研究費を充てて実施したため、本年度は、地域社会を超えた人の移動と家族との関係に関して調査を進めることができた。その結果、総合的に考えて、研究課題に関する調査研究は、おおむね計画通りに進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は研究期間の最終年度であるので、最終報告書の作成に向けて、これまでのスンバ調査とカラワン調査で得た資料の整理および分析を進め、二つの社会で得た知見を比較研究することによって、社会変動の著しい二つの地域社会における、家族の生存戦略と親族ネットワークにどのような共通性と差異があるのかを明らかにしたい。また、当初の申請書では24年度にカラワン県で調査を実施する計画であったが、23年度の調査で、必要な資料はある程度そろったので、本年度は、家族の生存戦略を明らかにするために、とくに東スンバ県を中心に補足的な調査を実施する計画である。
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