平成24年度は、1回の現地調査をインドネシアにおいて実施した。また、研究期間の最終年度であるので、最終的な成果のまとめに向けて、これまで東スンバ県とカラワン県の調査で得た資料の整理および分析を進め、二つの社会で得た知見の比較研究を進めた。研究実施計画に記載していないが、あらたに東スンバ県と社会・文化的に共通性を有する中部マルク県ハルク村を調査地として選び、家族の生存戦略と親族ネットワークに関して、比較研究のための調査を実施した。 インドネシア調査(平成24年8月30日~9月17日)では、最初にジャカルタのインドネシア科学院の研究者からインドネシアの移住労働者に関する情報を得て、また中央統計局ではインドネシアの家族と世帯に関する統計資料などを収集した。西ジャワ州の農村地域(カラワン県とインドラマユ県)では海外移住労働者に関する補足調査を実施した。その後、中部マルク県ハルク村でおもに親族と村落組織に関して人類学的な聞き取り調査を実施した。さらに東スンバ県において家族・親族について補足調査を実施し、さらにウンガ村の慣習組織代表に、平成24年11月に予定されていた慣習家屋の建築に対する各氏族の貢献に関する報告を依頼した。 本年度の調査によって次の2点がとくに明らかになった。 ① 中部マルク県ハルク村でもスンバと同様に氏族(marga)が存在し、村長の選出などに際して、大きな政治的役割を有している。この点で、氏族(kabihu)の社会的機能が小さくなっている東スンバ県ハハル郡とは異なっている。 ② 西ジャワ州インドラマユ県では、比較的裕福な階層から台湾に移住労働に出た男性の事例を調査した。この男性は、台湾で稼いだ収入を世帯の生存戦略ではなくイスラーム的福祉活動に充てて、自身の社会的地位を高めている。多くの女性の海外移住労働が世帯経済に組み込まれているのと対照的であった。
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