本研究は、いわゆる「雑魚」などとして扱われる淡水魚が、いかなる目的で資源化され、どのように採取・利用されてきたのか、さらにはそれらの変容と消長の過程を民俗学的視点から明らかにし、飽食の時代に進むなか人々の志向が海産物に傾く一方で忘却されてきた民俗知識を掘り起こし、それをもとに、内水面の生態系をめぐる環境教育、道徳教育、来るべき食糧問題、地場の資源を取り入れた商工観光構想、文化構想に寄与するためのチャートを作成することを目的とする。 平成22年度は、上記目的と単年度研究計画に基づき、以下の研究を行った。 1、北海道開拓記念館所蔵文書資料(特に内田瀞関係資料)などの文献調査を行い、開拓期におけるウグイと人間の関係に関する記録を収集した。 2、アイヌ民族における淡水雑魚の利用形態や精神的位置づけ(神格化の状況、口承文芸における淡水雑魚の扱われ方など)についての情報を収集した。 3、北海道南西部においてフィールドワークを行い、ウグイから出汁を取る技術と料理についての調査、尻別川下流域(蘭越町)におけるヤツメウナギ漁とヤツメウナギによる町おこしの調査、および淡水雑魚漁に関係する民具の調査を行った。 4、以上の調査成果と科研申請以前の予備調査成果をもとに、「雑魚」が「雑魚化」していく過程について検討のうえ、日本民俗学会第62回年会で口頭発表し、批評を仰ぐとともに、東北地方でのウグイの資源化に関する情報を収集した。 5、山陰地方の湖沼および中国山地において、淡水魚の資源化の歴史に関する情報を収集した。
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