本研究は、いわゆる「雑魚」などとして扱われる淡水魚が、いかなる目的で資源化され、どのように採取・利用されてきたのか、さらにはそれらの変容と消長の過程を民俗学的視点から明らかにし、飽食の時代に進むなか人々の志向が海産物に傾く一方で忘却されてきた民俗知識を掘り起こし、それをもとに、内水面の生態系をめぐる環境教育、道徳教育、来るべき食糧問題、地場の資源を取り入れた商工観光構想、文化構想に寄与するためのチャートを作成することを目的としている。 平成23年度は、上記目的と単年度研究計画に基づき、以下の研究を行った。 1、前年度から継続して、北海道開拓記念館所蔵文書資料(特に内田瀞関係資料)などの文献調査を行い、開拓期におけるウグイと人間の関係に関する記録を収集した。 2、前年度から継続して、アイヌ民族における淡水雑魚の利用形態や精神的位置づけ(神格化の状況、口承文芸における淡水雑魚の扱われ方など)についての情報を収集した。 3、主に北海道道央部においてフィールドワークを行い、ウグイから出汁を取る技術と料理についての調査、および淡水雑魚漁に関係する民具の調査を行った。 4、平成22~23年度の調査成果と科研申請以前の予備調査成果をもとに、日本人において雑魚とは何なのかという根本問題について、特にウグイに対する認識の地域差・時代差に焦点を当てて論文化し、日本比較文化学会の学会誌である『比較文化研究』No.98などで公表した。 5、木曽三川流域、四万十川流域、青森県内、および韓国において、淡水魚の資源化の歴史と現在に関する情報を収集した。
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