本研究は、いわゆる「雑魚」などとして扱われる淡水魚が、いかなる目的で資源化され、どのように採取・利用されてきたのか、さらにはそれらの変容と消長の過程を民俗学的視点から明らかにし、飽食の時代に進むなか人々の志向が海産物に傾く一方で忘却されてきた民俗知識を掘り起こし、それをもとに、内水面の生態系をめぐる環境教育、道徳教育、来るべき食糧問題、地場の資源を取り入れた商工観光構想、文化構想に寄与するためのチャートを作成することを目的としている。平成25年度は、上記目的と単年度研究計画に基づき、これまで行ってきた文献調査・フィールドワークにおいて新たに調査の必要性が生じたもの、これまで計画通りに調査ができなかったものを中心に、以下の研究を行った。 1.前年度から継続して、北海道開拓記念館所蔵文書資料などを中心とした文献調査を行い、開拓期におけるウグイと人間の関係に関する記録を収集した。また、アイヌ民族における淡水雑魚の利用形態や精神的位置づけ(神格化の状況、口承文芸における淡水雑魚の扱われ方など)についての情報を収集した。 2.北海道において特にウグイから出汁を取る技術と料理についての調査、および雑魚漁に関係する民具の調査を行った。 3.岩手県、新潟県、長野県、静岡県、富山県、福井県、奈良県、鹿児島県において、ウグイ、オイカワ、フナなどの資源化の歴史と現在、および北海道産コマイの食用としての流通に関する情報を収集し、北海道との比較対象事例としてのデータベース化を行った。 4.本研究によって集積された淡水雑魚の多目的資源化に関する民族知識・技術については、内水面の生態系をめぐる環境教育、道徳教育、来るべき食糧問題、地場の資源を取り入れた商工観光構想、文化構想などに寄与する文化資源としての有効性が極めて高いことを明らかにした。
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