本年度は、これまで購入したり、文献複写した「評定所」関係の図書・史料についてその具体的分析に取り掛かった。 また、あわせて昨年に引き続き東北大学付属図書館、国会図書館、内閣文庫、東京大学法制史資料室等の「評定所」関係の史料が所蔵されている機関を広く調査した。 そして、収集・分析した史料を基礎として、データーを整理することを開始した。その際特に留意したことは、近世の中期を一つの画期としてその前後において評定所の果たした役割がどのように変化しているかという視点を常に持つことであった。また、評定所が中心となって実施された政策のなかに各地方の独自の状況を顧慮したものがどの程度存在しているかを見極めることが肝要であると考えた。さらに、同じ幕府の領地でも、江戸、大坂、京都やその他種々の遠国奉行支配地等における相違点も一部存在していることを一貫して確認したものである。 その上で、評定所は、江戸時代において、いわば現在の「最高裁判所」のようなものと定義される一方で、近世においては司法と行政が明確に区分されていないという厳然たる事実を反映した結果として、たとえば江戸時代の三大改革、すなわち享保改革、寛政改革、天保改革における重要な具体的政策の立案、決定の際にも不可欠の機能を果たしていたことを明らかにすることができたと考えている。 以上の成果を基礎として、現在史料紹介および論文執筆の準備を始めているところである。
|