2011年度に着手したベッカリーアの市民社会論について引き続き解析を進めた。ベッカリーアは市民刑法原理の矛盾を「市民と人の二元論」によって克服しようとしたという仮説を立て、解釈のカギをなす名誉論を集中的に検討した。作業の成果は、2013年度中には公刊される予定の共同論文集に収録されることに決まった(「ベッカリーア『犯罪と刑罰』における市民・人・名誉―イタリアにおける市民社会論のために」杉田ほか編『市民社会論』、初校ゲラ校正中)。他方、19世紀イタリア刑事法文化史を司法統計などの一次資料によって再構成した論文を「リソルジメント」(北村・伊藤編『近代イタリアの歴史---16世紀から現代まで---』、pp.45-72)として公表した。研究報告「セレーナ・クルス事件再考」(講述録は『新しい家族』no.56に掲載予定、初校ゲラ校正済み)は、その副産物である。これらの研究を含め、今までのイタリア法文化史研究全体の中間総括作業を企図し、研究報告「イタリア人にとって法とは何か」(講述録は『星美学園短期大学日伊総合研究所報』9に収録)をおこなった。これは、イタリア法文化の歴史的考察、裁判事例の分析などにもとづいて、イタリア法文化の本質を「文化としての法」に見出すことができるというテーゼを追究したものである。以上の過程において、複数のイタリア人研究者との意見交換から大きな刺激を受けた。この中間総括作業の成果に基づくさらなる展開として、2012年度末に龍谷大学矯正・保護総合センター主催「人と社会を結ぶソーシャル・ファーム---罪を犯した人を排除しないイタリアの挑戦---」シンポジウムにおいて講演をおこない(Ustreamで視聴可能)、さらに2013年6月末にイタリア文化会館にて開催予定の日伊比較法研究会設立大会にて、イタリア法文化論に関する研究報告をイタリア語でおこなう予定(確定)。
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