研究課題/領域番号 |
22530005
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
神保 文夫 名古屋大学, 法学研究科, 教授 (20162828)
|
キーワード | 近世法 / 藩法 / 江戸幕府法 / 裁判 / 法曹 / 法実務 / 吟味筋 / 出入筋 |
研究概要 |
研究実施計画に従って、主に西日本地域の藩法史料の調査・収集を行うとともに、関連資料・幕府法関係史料の調査も併せて行いつつ、収集した史料の整理・分析作業を進めた。旧藩庁・遠国奉行所等所在地の現地調査ができたのは津山藩、福岡藩、飛騨郡代等比較的少数に止まり、東京・京都等の図書館・資料館での関連史料調査に多く時間を費やす結果となったが、本年度中に新たに収集することができた史料は、筆写によるもの(釈文のほか史料の覚書等を含む)が400字詰原稿用紙約100枚、マイクロフィルムからの引伸し印画が約600コマ、電子複写が約140枚、デジタルカメラ撮影によるものが約1050コマ等にのぼる。このほか、江戸時代ないし明治時代初期の法制史料(写本・版本類)約15点(冊子19冊・文書31通・絵図1舗)を、古書店を通じて購入した。収集史料の整理・分析作業はなお継続中であり、全体の総括は研究計画の最終年度である平成24年度の作業となるが、既にこれまでの整理の過程でも、江戸時代の裁判制度とその運用のあり方、法曹的吏員の法実務の実態等に関する新知見を少なからず得ている。その主なものをあげるならば、第一に、美作国津山藩(松平家)に関して、裁判機関たる各奉行・郡代等の管轄、刑事裁判手続、法曹的吏員の関与、刑罰体系、刑の執行等の概要を明らかにできたこと、第二に、出入筋の裁判で金銭債務の分割弁済を命ずる裁判実務の形成に関わると考えられる事例を見出したこと、第三に、江戸幕府評定所における「三手掛」の裁判実務の詳細を知り得る記録を見出し、法曹的吏員の活動実態の一端を明らかにできたことなどがある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
旧藩庁所在地等の現地調査とともに、東京・京都等での関連史料調査についても、おおむね当初の計画に沿った形で実施し、史料の収集・整理が進んでいる。津山藩の「断獄定書」、江戸幕府の「評定所三手掛手留」などの重要史料については既に全部又は一部釈文を作成し、最終年度(平成24年度)のまとめの作業に向けた準備を整えつつある。
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度は研究計画の最終年度であるので、これまでに調査・収集した史料を分析・検討する作業を行いつつ、必要に応じて補充的調査等も実施し、それらを踏まえて研究のまとめを行う。また可能な範囲で、未調査の藩についても新たに史料の調査・収集を行い、その成果を盛り込む計画である。
|