本年度は次の作業に取り組んだ。 第一に、法思想史、刑事政策理論、国際政策理論にかんする文献渉猟とその精査を行い、本研究の対象である刑事司法と外交政策の正当化にかんする知識を十全なものとすべく努めた。これと並行し、「象徴的リスク」の構築と、それが「予防」的介入措置に動員されるメカニズムを把握するため、行動主義的「法と経済学」、社会心理学等などにかんする基礎知識の習得を継続した。 第二に、ヨーロッパにおける予防的司法や介入政策をめぐる議論状況をフォローするため、ロンドン大学経済政治学院(LSE)、および同大学高等司法研究所において資料収集を行い、同大学にて「法と社会理論」を専門とするティム・マーフィー教授にインタビューおよび意見交換を行った。また、ウルリッヒ・ベック教授、メアリー・カルドー教授、マイケル・コックス教授らによるセミナーや公開討議にも足を運び、グローバル民主主義、コスモポリタニズム、人間の安全保障と介入政策等にかんする最新情報の収集に努めた。 第三に、予防的介入の法哲学の前提たる「リスク社会における法」の総括として、『法哲学年報2009リスク社会と法』を編集し、同誌上に論文「リスク社会と法-論点の整理と展望」を発表した。
|