本研究の当初の目的は、「予防」的措置の名の下で実施される介入により、憲法が保障する「自由」や「人権」が侵害される事態を念頭に、刑事司法と外交政策をめぐる議論に焦点を当て、社会的効用の最大化を目指す帰結主義的リアリズム(ないしは法道具主義的思考)と、「自由」や「人権」の義務論的基礎づけ(及びその制度的保障たる「法の支配」)との緊張関係について考察することにあった。しかし、2011 年 3 月の福島原子力発電所事故とその後の経過を追ううちに、科学的不確実性と「予防/事前警戒」の法哲学的再検討、および「緊急事態」における事後的介入の妥当性にかんする考察と結びつけて行う必要があることが明らかとなった。
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