平成24年度は高知・富山両県において、それぞれ現地実態調査を行ったほか、最終年度のとりまとめ作業として高知県において総括研究会を実施した。 高知県においては、沿岸海域の管理主体として定置漁業組合に着目し、県下の4つの大敷(定置漁業)組合および県下の定置漁業組合団体を管理する漁業協同組合連合会を訪問し、聞き取り調査を行った。富山県においては昨年度に引き続き黒部川流域のダム排砂問題について、追加調査を実施した。 両県での現地調査及び三年間の研究を踏まえた総括研究会には代表者、分担者、連携研究者の一人である富山大学の高橋満彦氏、研究計画において法社会学的調査技法の継承のために昨年度から参加を依頼した早稲田大学大学院法学研究科の外山浩子氏のほか、アドバイザーとして早稲田大学法学学術院教授の楜澤能生氏にも参加していただき、漁業権を中心とした沿岸海域及び河川流域の今後の管理のあり方について議論を行った。また、総括研究会と同時に実施した高知県幡多郡黒潮町の現地調査では、高知県漁協支所・集落 発の取組みであるカツオたたき体験施設や漁協組合員の家族が経営する漁家民宿の取り組みを視察(及び聞き取り、体験)し、漁業集落および漁業協同組合が沿岸海域の管理において今日なお大きな役割を果たしていることを確認した。 研究成果として、『変容するコモンズ』に緒方賢一「第2章 沿岸海域の「共」的利用・管理と法」、松本充郎、新保輝幸・飯國芳明、高橋佳孝、緒方賢一「第11章 山野河海の持続的利用をめざして」を発表した。また、本研究のキーワードである権利内実の空洞化を取り扱った論考として、緒方賢一「2009年農地法改正における遊休農地規定とその適用の現段階」を発表した。また、2013年6月には日本農業法学会において研究成果の一部を発表予定であるほか、同7月には代表者・分担者の共著で論文を発表予定である。
|