研究概要 |
研究分担者・座主祥伸(関西大学)は,期間前半に裁判制度の基礎研究として,日本民法の94条に関する経済学的考察について,2010年度日本法と経済学会第9回全国大会(政策研究大学院大学)にて報告し,国際条約の批准条件の実証的な研究について,2010 Annual Meeting of Asian Law and Economics Association(北京経済貿易大学)にて報告した。期間後半では,司法アクセスの基礎研究として「裁判官を戦略的なプレイヤーとして扱う研究」と「訴訟当事者の裁判活動に関する研究」を結びつけた分析を進めた。この分析では,出世や評判を気にする裁判官を考慮したとき,訴訟当事者(原告・被告)の民事裁判における活動レベルは,(上訴がない場合と比べると)上訴の可能性がある場合,減少するどいう基礎的結果を得た。これは裁判制度上の上訴の存在が訴訟当事者の裁判費用を節約する可能性を示したものである。 研究代表者・池田康弘(熊本大学)は,日本の法学者の間で論争の的となっている懲罰的損害賠償について経済学的考察を進めた。現代経済学研究会土曜セミナー(九州大学西新プラザ:細江守紀氏主催)において,不法行為法の目的と懲罰的損害賠償制度の抑止効果にについて,基礎的な研究報告を行い,この制度によって民事裁判において加害者の証明活動を奮起させ,必ずしも加害者の不法行為を抑制することにはならないという基礎的結果を示した。 当該年度期間中に研究代表者と研究分担者とで,数回の研究打合せを行い,相互にコメントを出し合い,研究成果へとつなげた。
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