研究課題/領域番号 |
22530014
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
後藤 武秀 東洋大学, 法学部, 教授 (90186891)
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キーワード | 合股 / 台湾法 / 慣習法 / 祭祀公業 |
研究概要 |
本年度は、当初の予定にしたがって、日本統治時代における合股に関する文献資料の収集と、今日においても合股という家族経営の企業形式が台湾及び南中国に根強く残っていることから、企業経営者に対する聞き取り調査を中心に研究を進めた。文献収集については、一方で国立中央図書館台湾分館において日本統治時代の合股法案に関する立法資料の収集を行い、他方、日本統治時代における判決の収集を行った。その成果の一端は、東洋通信において発表した。また、合股という家族経営を中心とする小規模企業の形式は今日の台湾及び南中国に根強く残っていることから、台湾南部及び特に広東省に進出している台湾企業について聞き取り調査を行った。その成果の一端は、アジア文化研究所研究年報に発表した。台湾における慣習法の中でも会社に関する慣習法は、今日においても利用されているので、本研究は今日の台湾系企業の実体についての理解につながる要素を持つものであり、研究を進めるにしたがってその重要性の認識は益々高まっている。台湾における慣習法は日本統治時代に西洋法に基づく立法化により一部分は西洋法体系への変容を遂げてきているが、しかし、表面上西洋法化が行われているものであっても、実態において依然として慣習法が機能している部分が認められ、本研究の対象とした合股もその1つであるといえる。慣習法と西洋法との相互関係に関する一般理論の定立が次の課題であり、従来進めてきた祭祀公業及び家族に関する研究の成果に加え、合股に関する研究の成果を総合して一定の理論枠組みを提示するところまで研究は進展した。理論枠組みについては、アジア文化研究所年次集会において概要を報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本統治時代における合股令案制定に関する立法資料の入手・分析は予定通り進んでいる。その分析内容について口頭報告は行ったが、まだ論文として公刊されていない。また、台湾における西洋法と慣習法との一般的関係に関する理論枠組みについても口頭報告は行ったが、まだ論文として仕上がっていない。その学術誌における発表は平成24年度になる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の推進は、以下の2点を中心として行う。第1に、日本統治時期における合股令制定過程に関する分析を論文として発表することである。第2に、慣習法と西洋法の関係について、立法の果たした役割、裁判所の果たした役割、を区分しつつ分析することである。これには、合股だけでなく、祭祀公業、家族等従来の研究によって得られた成果を総合して理論枠組みを提示する。
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