本年度は、最終年度であり、質的データの収集をさらに行うとともに、背景のアクターごとの一般的観念の構造、その社会制度的特質との関連なども含め、分析を継続した。これらのデータを踏まえて、立体的に過失をめぐる医療者の認知と、医療制度の認知後世への影響などを解析し、学会での発表などを行った。具体的には次のような形で実施した。1)事故当事者へのインタビュー調査の結果を踏まえて、過失等の観念の構造に関する仮説モデルを構築し、理論的整理を試みた。2)事故当事者へのインタビューについて、必要な補足調査を行った。特に患者側のデータが不足していたため、数名の医療事故経験者にインタビュー調査を行った。3)海外においても、制度的な差異の影響などの観点も踏まえ、医療機関、患者団体等において、インタビュー調査を実施した。4)業界紙等報道記事、公的文書、判例、病院施設の内部文書については、継続して分析を進めた。5)ここまでの研究に関連する成果として、すでに、『医療メディエーション:コンフリクト・マネジメントへのナラティヴ・アプローチ』を出版したほかいくつかの論文も公表した。6)また、本研究にかかわる学会発表として、今年度も、国内では、医療マネジメント学会などでの発表を予定しているほか、海外では、5月末にボストンで開催されるLaw and Society Association Annual Meeting において論文発表した。また4月15日には、カナダのブリティッシュ・コロンビア大学Green College Lecture Series の一環として、本研究成果に基づく講演を行った。また11月に、台湾にて、台北、および高雄にて、医療事故関連カンファレンスで研究成果を発表した。
|