本課題研究は、刑事施設視察員会の制度ができて間がない時期の実態を丁寧に調査し、その記録をデータとして残すことを第一目的とする。刑事施設視察員会の活動について、法務省は、ホームページに、ある程度詳細なデータを公表している。しかしながら、それは、視察委員会が公式に出したアウトプットであり、そこに至ったプロセスについては、その資料からは推し量ることができない。私は、横浜刑務所での視察委員の経験を、印象ではなく数値化した形で、記録しておいた。受刑者から出された提案書は、医療関係、衛生問題、食事の苦情、受刑者同士のトラブルなどの項目に分類しただけでなく、同一人が大量に書いていること、さらには、一通の提案書の長文の投稿があることも数値として反映できるようにデータをとった。さらに、受刑者あるいは刑務官との面談、毎回の委員会の詳しい活動内容なども記録している。そして、それらを整理し、わかりやすく記述して後の研究に役立てることができる形とした。 次に、刑事施設視察員会の活動についてまとめることによって、今後の課題を浮き彫りにすることができた。この制度は、行刑改革会議の提言を受けて創設されたものであるが、司法改革と並行してなされた改革である。裁判員制度導入と並んで、市民の司法参加という目的が込められている。目標は正しいとしても、いわゆる素人が参加することが、直接的に良い結果を生むためには工夫が必要である。それが、弁護士の活躍であったことを明らかにできた。成果の公表について、2013年10月に日本犯罪社会学会の学術大会においてテーマセッションを開くことが予定されている。また、棚瀬孝雄古稀記念論集への論文の収録も予定されている。
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