研究概要 |
本年度は予定された以下の三つの課題(A)(B)(C)につき、次のような成果を得た。 (A)『体系』に関する「計画の概要と成立過程におけるその意義 ・サヴィニーがいう『体系』の「計画〔Plan〕」に相当する、あるいは関連する可能性のある遺稿として、Ms.925/11,B1.3-17に加え、B1.29-38,56-64がある。ここには、総則のみならず、物権法と債務法の梗概が含まれている。 ・サヴィニーはこの「計画」をベトマン=ホルヴエークに送付し、コメントを得ている。サヴィニーはそのコメントをさらに「計画」 に反映し、『体系』の執筆の参考とした。このコメントを分析することで、『体系』の執筆過程の一部を解明できる可能性がある。 (B)『体系』の「序論」の成立過程について ・「序論」の遺稿には多数の断章の形で草稿が記されている。これの断章のどれが『体系』の序論のどの部分に活かされているかについては、比較的容易に該当箇所が推定できる場合もあれば、単純な対比では不可能な場合もある。 ・「序論」の遺稿の主要部分は15頁からなり、サヴィニー自身により1から15までの番号が付されている。検討の結果、これらは番号順に1から15へと進む形で作成されたと推定される。またその成立時期は、番号の若い草稿(おそらく1から6)が1835年の春から秋の間であり、番号の大きい草稿(15)が1838年から1839年の秋までの間であると推定され、長期間にわたり断続的に執筆がなされた可能性がある。 (C)『体系』の「法源論」の成立過程について ・法源論にかかわる遺稿(B1.184r-195v)と公刊されたテクストを比較したところ、ほとんどの部分について両者は同じであった。ただし用語の変更や数行程度の差し替え等が何か所か散見される。大きな変更点としては、第9節の末尾部分について公刊されたテクストでは大幅な修正と加筆がなされていること、第16節の末尾部分やはり大量の加筆がなされていること、があげられる。
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