研究概要 |
1.本年度の成果:本年度は予定された以下の三つの課題((A)『体系』に関する「計画」の概要と成立過程におけるその意義、(B)『体系』の「序論」の成立過程について、(C)『体系』の「法源論」の成立過程について)のうち、(A)について、以下の新たな成果を得た。 第一に、内容上の検討を通じて、遺稿群に含まれているクレンツェおよびフランツのコメント(Bl. 148-156, Bl. 158-179)が、同じ遺稿群に含まれている『体系』§52の第一草稿(Bl. 214-217)および同§53の草稿(Bl. 240-242)を対象とするものである可能性が明らかになった。第二に、第一の点から、上記§52の第一草稿および§53の草稿の成立が、1836年から1837年にかけてである可能性が明らかになった。つまり、これら二つの草稿は、サヴィニーが自ら『体系』の成立過程として記した一文(Bl. 86r, System I, S. XLIX)に掲げられた時期に作成されたものである可能性がある。第三に、Bl. 144vとBl. 145vに記されたサヴィニー自身によるメモは、上記第二点でふれた草稿の準備メモである可能性が高いことが明らかになった。 以上三点から、とりわけ§52について、準備用メモ(Bl. 144v)→§52第一草稿→クレンツェのコメント→フランツのコメントという時系列順の成立過程が明らかになった。また、これらの成果をふまえることで、『体系』の成立過程におるベトマン=ホルヴェークのコメント(Bl. 67-70)の影響を検討する前提を整えることができた。 2.研究成果の意義:以上の研究成果は、サヴィニー自身の草稿に基づき、『体系』の成立過程の一部を明らかにするものである。いずれもはじめて明らかになる知見であり、重要な成果である。
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