平成22年度においては、研究課題に関する基礎的な作業として、内外の資料の収集、納税猶予制度の活用状況についての情報収集、関連分野の研究者との意見交換等を行った。内外の資料の収集としては、日本、ドイツ、アメリカ等の相続税および中小企業税制に関する基本書やコンメンタール、日本およびドイツの近年の法改正の立法資料および解説書、中小企業に関する資料、実務雑誌等を収集し、それらの分析を行った。その結果、(1)事業承継税制の制度目的として、近年は雇用確保が注目されていること、(2)目的に対する制度の効果の評価が十分でないこと、(3)従来から事実上行われていた事業承継の優遇が明確な法制度へと変わってきたこと等が明らかとなり、23年度からの中心的な研究対象をつかむことができた。納税猶予制度の活用状況についての情報収集としては、事業承継の実態、納税猶予制度の評価、中小企業経営者の認知度等について、中小企業基盤整備機構、東北経済産業局等への聞き取り調査を行った。加えて、繰越期間において、中小企業基盤整備機構支部、商工会議所等への聞き取り調査を行った。その結果、(1)事業承継に関する事前の計画の重要性、(2)税制に限らず様々な問題があり、多くの専門家が関わること、(3)個々の事案について問題点を整理するコーディネーターの仕事が重要であること、(4)近年は親族外承継を進めるためのマッチング業務の重要性が高まっていること等の情報を得た。さらに、研究会等を通じて、関連分野の研究者との意見交換等を行い、事業承継税制の制度目的の評価や、制度を利用する際の実務上の問題点について知見を得た。
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