研究課題/領域番号 |
22530021
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
澁谷 雅弘 東北大学, 大学院・法学研究科, 教授 (80216035)
|
キーワード | 相続税 / 事業承継 / 中小企業 |
研究概要 |
平成23年度は、研究課題についての中心的論点である事業承継税制の意義政策目的としての正当性、政策手段としての合理性等に関して、一昨年度に収集した資料等の分析および追加的な資料等の収集、聞き取り調査等による情報収集を行った。その結果として、事業承継の問題およびその対策は、広く中小企業政策の中に位置づける必要があるということが明らかになり、研究の最終年度に向けて取りまとめの方向性を定めることができた。具体的には、日本においては経営承継円滑化法の活用度は未だ低いが、その背景として、(1)中小企業に対する施策が充実する中で、事業承継を支援する制度の存在感が弱まっていること、(2)中小企業の経営者にとっても、事業承継は数ある経営課題の中のひとつであり、しかも必ずしも優先順位の高い課題ではないこと、(3)中小企業を支援する立場の専門家にとっても、事業承継問題の重要性は、地域や対象とする企業の規模・業種等により多様であること、(4)様々な中小企業支援策の中で、経営承継円滑化法は実務的にみて必ずしも利用しやすいものではないこと等が判明した。 そして、経営承継円滑化法がそのような制度になった背景には、事業承継支援の政策目的としての正当性をめぐる議論が影響していることも分かった。そのような議論は、アメリカやドイツの事業承継税制に関してもなされていたものである。これらの点については、研究会等を通じて、関連分野の研究者との意見交換等を行い、さらに知見を深めることができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
東日本大震災の影響により、東北地方の中小企業施策の専門家に対する聞き取り調査は難しくなったが、他の地域での調査を行うことである程度それを補うことができた。また、文献資料の収集および分析は、震災のため一時期中断したものの、概ね予定通り進めることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、これまでに取集した資料・情報の分析や比較検討を行い、事業承継税制の意義、政策目的としての正当性、政策手段としての合理性、事業承継に関連する諸制度との連携の必要性、必要とされる社会的条件等について仮説を設定する。その上で、その仮説の当否について、研究会での報告・議論や、相続税・事業承継に関する研究者・実務家との意見交換により検証を行う。
|