行政上の義務違反行為に対する刑罰以外の制裁手段(課徴金、反則金、過料、制裁的公表、等々)およびこれと機能的に類似する行政上の誘導手段(環境税、ごみ処理手数料、ロードプライシング、エコカー減税・補助金、等々)について、法理論上の問題を総合的に解明することを試みた。特に、行政上の制裁および誘導の概念が法解釈論においてどのような意味を有するかを概観した上で、運転免許停止処分および優良運転者免許証交付に関する判例を素材として、行政上の制裁および誘導の概念が取消訴訟の訴えの利益の判定において有する意味を分析する論攷を公表した(法学〔東北大学〕76巻2号)。また、環境省の「税制全体のグリーン化推進検討会(第2回)」において、環境税の法的位置づけに関して報告を行い、環境税について、法的観点からは「行政手法としての正当化」と「税としての正当化」という「二重の正当化」が必要であること、また、使用料・手数料、負担金・分担金のように、税ではなく受益者負担として正当化されうる類型があり、さらに、財政目的を有しない課徴金もありうるから、これらの諸類型の相互関係を整理し、それぞれに対する法的要請を明らかにする必要があることを指摘した。その上で、環境税については、誘導目的と財政目的との関係、汚染者負担原則と租税公平主義との関係、国と地方公共団体の間の権限配分との関係、課税目的の明確化、税収の使途、減免措置の問題、等の論点を検討した。
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