研究課題/領域番号 |
22530023
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
飯島 淳子 東北大学, 大学院・法学研究科, 准教授 (00372285)
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キーワード | 公法学 / 地方分権・地方自治 / 協働 |
研究概要 |
平成23年度は、契約化現象の現状分析と法的把握を踏まえ、一つのキーワードとして導き出された「公的組織の自由=責任」に対する法的統制のあり方を探ろうと試みた。フランス法のみならず、EU法をも射程に入れ、公役務編成権に着目することによって、この作業を行った。具体的には、公的組織の市場原理への服従を要請するEU法に対し、公的組織の公役務編成権の独占を基本としてきたフランス法が、いかに対応しようとしているかを、最近のコンセイユ・デタ判例の展開を通して明らかにした。市場の保護を標榜するEU法と公役務の優先を標榜するフランス法との"攻防"は、一見すると、前者による後者の制約のようにも見えるが、フランス法は、EU法のロジックに則りながらも、これを自らのロジックに馴化させ、公役務編成権を実質的に保持することに成功している。この判例法理の基底にあるのは、契約の法的安定性の要請ひいては公役務の継続性の要請である。法的安定性は、伝統的には、契約領域からの第三者の排除によって、いわば消極的に確保されてきたが、それが通用しなくなった現在では、契約領域の第三者への開放と契約裁判官の関与の強化によって、いわば積極的に確保されようとしている。法的安定性の要請が、適法性の要請との拮抗のなかで、行政契約理論の基礎に改めて据え付けられ、このことを介して、「公的組織の自由=責任」を規律する枠組みが形成されようとしている。 加えて、平成23年度は、東日本大震災における地方公共団体の活動に注目し、フランス法研究から得られた基本的な考え方を具体化する作業を開始した。とりわけ、「連携」の概念に着目し、契約的手法等を用いた作用面での「連携」と新たな組織の設立等を伴う組織面での「連携」という分類に拠って、今次震災に見られる新たな動きを法的に意味づけることを試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の進展に伴い、当初の計画を様々な方向に発展させてはいるものの、法理論観点・法制度的観点・実証的観点から、フランス法に関して得られた成果を日本法に応用する作業に着手することができたため、研究の目的を達成すべく、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
日本法への示唆を引き出すという観点からも、わが国が現在直面している東日本大震災に関わる問題に重点を置くことを考えている。平成23年度において既に研究を開始しているが、日本における地方分権・地方自治の一般的な理論的・実務的状況のなかで、また、フランス法に関する研究成果を踏まえた上で、研究をさらに発展させていきたい。
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