研究課題/領域番号 |
22530026
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
三宅 雄彦 埼玉大学, 経済学部, 教授 (60298099)
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キーワード | 憲法理論 / 精神科学 |
研究概要 |
平成23年度においては、ドイツ憲法理論の古典的存在としてのルドルフ・スメントの学説をその方法論の観点から再検討する作業、とりわけ、このスメントの見解を、第一には、その彼の理論が展開された当時の文脈のなかで、第二には、彼の理論を継承した門下の理論との関連のなかで検討する作業を、それぞれ行った。 第一に、スメント学説とケルゼン学説との比較する作業を行った。もっともこれは、従来行われてきたような、ケルゼンの立場からスメント理論の政治性を糾弾するのではなく、より客観的に、とりわけ、ゲッティンゲン大学が所蔵する、様々の遺稿や書簡など、スメントにまつわる様々な資料を踏まえて、むしろ反対にスメントの立場からケルゼン理論がどのように見られていたかに着目する形で、検討された。この成果については、三宅雄彦「スメントの規範力論」古野豊秋編『憲法の規範力』(信山社、近刊。脱稿済み)として公表される予定である。また、派生的に、このケルゼン法理論を発展的に継承しつつ、憲法解釈論を展開している、現代の国法学者イェシュテトの見解に着目しながら、ケルゼン学説の現代の理論状況におけるインパクトを測定した。同じくこれは、三宅雄彦「純粋法学と行政改革」で近く公表する予定である(掲載決定済み)。 第二に、スメント学説を、その後の学説史的展開のなかで検討する作業を行った。具体的には、ゲッティンゲン大学におけるスメントの後継者ケットゲンの薫陶を受けた行政法学者、フリッツ・ヴェルナーが唱えた、著名な「具体化された憲法としての行政法」というテーゼが、本来どのような意味を持っていたか、について検討を加えた。この成果については、前者に関しては、三宅雄彦「憲法具体化と行政法」ですでに公表済みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
スメント憲法理論の方法論的視座を深める作業、とりわけ、ゲッティンゲン大学附属図書館の所蔵するスメント文庫の資料を、昨年は詳しく調査する機会が得られ、その調査の成果を具体的に利用する作業を展開することができたため。加えて、ヴェルナーやクリュガーといったスメントの周辺の人物を検討することにより、スメント学説の内実を、より多角的に把握することができているため。
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今後の研究の推進方策 |
スメント憲法理論の方法論的視座を深める作業は順調に実施できているが、多面、テオドール・リットの教育哲学を探求する作業については、準備作業という段階にとどまっている。今後は、このリット研究という観点について、より踏み込んだ調査を実施することに努めたい。他方で、順調に進んでいるスメント憲法理論について調査については、引き続き実施したい。平成24年度においても、ドイツ・ゲッティンゲン大学図書館に調査に行く予定であり、また、同大学教授でスメント理論にも詳しい、ハンス・ミヒャエル・ハイニ教授から助言と協力をいたたく予定である。
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