(1)日本の港湾制度について,国際コンテナ戦略港湾における港湾運営会社の設立をはじめとした実務の動向をフォローした。また,空港については,国会に提出された国管理空港の運営等に関する法律案を中心に考察を行った。他方,フランスに関しては,ラ・ロシェル港やポワチエ空港などの現地調査を行うとともに,運輸行政に関連する会計検査院の報告書等を検討し,近時の財政法令の改正が運輸行政に与えた影響について調査した。 (2)これらの調査・検討の結果をもとにして,港湾法の日仏比較の考察を継続的に行った。その成果のひとつとして,ポワチエ大学法学部における学術講演があり,公役務特許をはじめとした諸法理の実際的な意義,日仏両国で進行している地方分権改革との関係を中心に議論を行った。なお,その講演内容に大幅な加筆修正を施したものが『フランス海法雑誌』に掲載された。 (3)日本における港湾法などの運輸関係法令の解釈論や立法論については,昨年度までに行った基礎概念と判例の分析をも踏まえて,継続的に検討を行っており,その成果の一部については,近日中に脱稿する予定である。 (4)財政法の基礎理論研究としては,住民訴訟における権利放棄議決に関する最高裁判決が出されたことから,財政統制の基本原理を交えた再検討を行い,論説と判例解説を執筆した。また,公法基礎理論に関する研究として,基本権保護の観点からみた行政法理論の意義について考察した仏語論文を公表した。
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