研究課題/領域番号 |
22530028
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
渡辺 智之 一橋大学, 国際・公共政策大学院, 教授 (80313443)
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キーワード | 消費税 / VAT / GST / 国際取引 / 金融取引 / インボイス |
研究概要 |
3年計画の2年目である平成23年度においては、研究計画調書の記載事項に基づき、消費税制の金融取引と国際取引への適用に関する各国比較を行った。平成23年度における比較の対象は、主に、EUの仕組みとニュージーランドにおける仕組みである。また、平成22年度に検討行った不動産取引への適用に関しても、ニュージーランドにおける取り扱いを中心にさらに検討をさらに深めることができた。また、この過程で、ゼロ税率の適用に関する基礎的研究も行った(その成果は、平成24年度中に公表予定)。 平成23年9月にパリで開催されたIFA(国際租税協会)の総会に出席し、他の国際課税における問題についての情報交換とともに、消費課税については、特に、事業再編における取り扱いを中心に情報入手に努めた。このほか、VATの金融・国際取引への適用について、EU等の状況問の比較を行うべく、日本の消費税制の研究を深めた。 消費税の問題は、現在、「社会保障・税の一体改革」の文脈で、政治的な議論が中心になっているが、今後、税率が引き上げられた場合により顕在化すると考えられる問題点をあらかじめ検討しておく必要性を考慮するなら、国際比較を踏まえた基礎的検討の重要性は一層高まっている。今後、本プロジェクトの最終年度である平成24年度に向けて、EUの動向に関する調査を進展させるとともに、近年、ますます日本との経済的な関係が強まっている中国と韓国の付加価値税の動向と問題点についても検討していくこととしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた出張を行い、それをもとに、論文をまとめ公表するとともに、学会報告も行った。また、その過程で、海外の研究者との意見・情報交換も、これまでよりも深いものとすることが可能となった。日本の消費税の外への発信については、不動産取引に関して英文の論文を書籍の一つの章として公表するとともに、日本の消費税制全般にわたる英文のデータベースの作成に着手した。さらに、24年度中に公表予定の消費税に関する論文も、現在、既に3本について、準備を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度の研究は、おおむね順調に推移したものの、予定していた消費税の納税義務者の問題、国際的事業再編における消費税の問題に関しては、まだ、本格的検討に着手できていない。これは、ヨーロッパの状況に比べ、日本の消費税の事案がまだあまりなく、制度的な問題点も浮き彫りになっているとは言い難いことにも一因がある。そこで、日本の消費税の仕組みをもう一度基礎から検討することを通じて、ヨーロッパのVAT(あるいはニュージーランドのGST)との比較を進め、消費税制の検討を進展させるように努めることとしたい。
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