研究課題/領域番号 |
22530029
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
阪口 正二郎 一橋大学, 大学院・法学研究科, 教授 (60215621)
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キーワード | 憲法訴訟 / 憲法 / 利益衡量 / 違憲審査基準 / 比例原則 |
研究概要 |
本研究は、(1)比較憲法学の観点から、アメリカの違憲審査基準とドイツの比例原則を対象として両者が共有していると考えられる「利益衡量」に焦点をあてて、違憲審査基準と比例原則の異同を、(1)それぞれが有する論理構造、(2)それぞれが生み出されてきた歴史過程、(3)それぞれが前提にする権利観、違憲審査の役割についての考え方の違いという観点から分析し、異同を見定めた上で、(2)憲法理論の観点から、両者が共有していると考えられる「利益衡量」について、政治哲学の議論を参考にして権利と利益衡量の関係を分析し、憲法判断過程における利益衡量の意義と限界を考察しようとするものである。平成23年度は、第1に、違憲審査基準と比例原則ではグローバルな観点から見れば比例原則の方が有力になりつつあり、違憲審査基準を採用するアメリカにおいても違憲審査基準よりも比例原則の方が論証方法としては優れているとする向きが少数ながら現れつつあることを示し、第二に、比例原則比例原則について、同じ比例原則を採用するドイツとカナダにおいて、比例原則の適用の仕方が異なっていることを示す研究を行った。第三に、アメリカの違憲審査基準とドイツの比例原則が共有していると考えられる利益衡量について、政治哲学における議論を参考にしながら、権利と利益衡量の関係について分析し、違憲審査基準と比例原則を利益衡量の方法だと理解する考え方では、権利は政府の行為の帰結を統制するものとしてしか観念されず、それでは権利を政府の行為の正当化事由を統制する「切り札」として観念することはできないことを明らかにした。その上で以上の研究成果を、下記13の研究業績の「憲法と政治哲学の対話」、「比較の中の三段階審査・比例原則」として公刊した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画について、一部計画以上に進んでいる部分と一部遅れている部分があるが、トータルで見れば研究は順調に進んでいると考える。着実に研究が進行していることは、下記13の研究業績の「憲法と政治哲学の対話」、「比較の中の三段階審査・比例原則」という2本の具体的な論文として順調に研究成果を発表していることによって示されていると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題について、今後は、引き続き、ドイツの比例原則とは異なってアメリカの違憲審査基準においては利益衡量に対する警戒心が強いことの原因を具体的な形で歴史的に明らかにすることを、主として利益衡量に対する警戒心を生み出した1950年代の違憲審査基準をめぐる議論の分析を通じて行うと共に、規範的な観点からの権利と利益衡量の関係の分析をさらに進め、日本の憲法訴訟論において利益衡量をどのように取り扱うべきかについての試論を構築したいと考えている。平成24年度は、研究の最終年度に該当するので、これまでの研究の再評価を行いつつ、最終的な成果を取りまとめて、この研究に一区切りをつけ、今後の課題を析出することにしたい。
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