本研究の目的は、「立憲主義の興隆」という憲法動向が憲法理論に対してどのような影響を及ぼしたのかを調査・検討することにある。具体的には、「憲法改革」以降のイギリス憲法理論の動向の分析を通じて、「立憲主義の復権は憲法理論と政治哲学の共同を促進する」という命題の妥当性を明らかにする一方、そのような理論動向の問題点をも明らかにした。また、イギリス憲法理論に関する比較憲法的研究の成果を踏まえて、日本憲法学における「憲法科学から憲法哲学へ」という理論的展開の歴史的意味を解明し、さらにその現代的意義と問題点を検討した。その際、奥平康弘、佐藤幸治、樋口陽一等の重要な憲法学者の学説を本研究の問題関心に沿って批判的に検討した。さらに、以上の研究成果を踏まえて、イギリスの「政治的憲法論」と日本のマルクス主義憲法学(長谷川正安)が説得力を持つ歴史的条件について試論的な研究を行って、憲法制度・憲法秩序の改革・変化が憲法理論に対して及ぼす影響を分析した。
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