ドイツの行政法学は、2000年以降、民間委託及び民間委託契約に関する法律議論を活発に展開しており、2004年には「変革期の委託発注法」、2007年には「公的任務履行過程への民間参入」、そして2008年には「委託発注者としての国家」というテーマのもと、大規模な学術シンポジウムも開催されている。そこにおける報告及び質疑応答の内容等は、2005年~2009年にかけて随時、書籍の形態で公刊されている。平成22年度は、上記諸文献を集中的に読み込む作業を行ったが、その過程で (1)EU及びEU加盟各国は、近年、「公私協働事業において、国家と協働で事業の遂行にあたる民間事業者(協働契約の相手方となる民間事業者)の選定・選抜手続のあり方」について、活発な議論を展開しつつあること (2)EUは、2004年に指令第18号を制定し、協働契約の相手方を選定・選抜することを目指した手続として、所謂「競争的対話」手続の導入を決定し、加盟各国の多くは、上記指令の国内法化を済ませたこと (3)EUの主要加盟国であるドイツは、上記EU指令第18号の制定当初から、競争的対話の導入に強く反対しつつ、やむなくEU指令第18号の国内法化に踏み切り、2005年、「公私協働促進法」を制定し、「競争的対話」手続の導入を実現したこと を、認識するに至った。そこで、この点に関する各種立法資料をさらに収集するとともに、それを詳細に分析することにより、競争的対話の概要、競争的対話を導入しようしたEUの思惑、及び逆にドイツがその導入に強く反対してきた理由等を浮き彫りにした。
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