研究課題/領域番号 |
22530035
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
岸本 太樹 熊本大学, 法学部, 准教授 (90326455)
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キーワード | 公私協働 / 行政契約 / 公共委託発注 / 競争的対話 / 公私協働促進法 |
研究概要 |
本年度も、昨年度に引き続き、"公私協働契約(公共的な事務の遂行を民間事業者等の私的法主体に委任・委託することを目的として締結される行政主体-民間事業者間の行政契約)"に焦点を当て、そこに妥当すべき法理論について、研究を行った。 前年度(平成22年度)は、"行政主体から公共的な事務の遂行を契約上委託されることになる民間事業者の選抜・選定手続のあり方"をめぐる、"EU及びドイツの立法及び議論動向"を解明することを研究の重点課題と位置づけた上で、"競争的対話"という新委託発注手続の導入を求めた"EU指令(2004年第18号)"に焦点を当て、競争的対話の具体的内容を確認するとともに、"EU委員会の報告書"、(競争的対話の国内法化に抵抗した)ドイツ連邦政府の"反対意見表明書"、さらには、(競争的対話を国内法化するために制定された)"公私協働促進法"に関する"ドイツ連邦議会議事録"、並びに、この問題に関連してドイツ国内外で執筆され、公表された"複数の学術論文"等を読み込み、論点を整理することに力点を置いた。そこで得られた研究成果が「公私協働促進法の制定とドイツ協働契約論の新展開(1)(2・完)」自治研究(第一法規)第86巻第3号(2010年)88頁以下、同第86巻第4号(2010年)60頁以下である。 本年度(平成23年度)は、上記の研究成果を研究会等において発表すること等を通じて、憲法学・行政法学及び国際公法学の研究者等との間で学術的知見の共有を図りつつ、前年度(平成22年度)及び今年度(平成23年度)実施した研究によって得られた研究成果を、別途論文にまとめて公表した。「ドイツにおける公私協働論と行政契約論の発展・展開」岡村周一・人見剛編『世界の公私協働-制度と理論』日本評論社(2012年)183頁以下は、本年度の研究成果の一部を公表したものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
"公共的な事務の遂行過程への民間事業者の参入・取込現象(公私協働)"に関する"欧州及びドイツの立法及び議論動向"については、"各種資料・文献等の読み込み"と"論点整理"作業等を通じて、概ねその全体像を把握しつつある。また、これまでの研究を通じて得られた学術的知見も、論文にまとめ、公表するに至っている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、所謂"公私協働"現象のうち、PFI等に代表される"公共的な性格を有する事業の遂行過程における官民間での協働"現象に焦点を当て、特に、「当該"PFI等の所謂事業遂行型の公私協働"を実現することを目的として官民間で締結される"行政契約(公私協働契約)"に妥当すべき法理論を解明すること」を主たる研究テーマとしている。 しかし、公私協働現象は、PFI等の所謂"事業遂行過程における官民間の協働"現象に限られるわけではない。"公私協働"及び"公私協働契約"の意義は、近年、この他にも、例えば環境法領域や都市法領域等、様々な行政法領域において活発に議論されつつある。そこで次年度(平成24年度)は、こうした点を踏まえ、都市法や環境法領域における公私協働現象にまで研究の対象を広げ、"協働を法的に構築する際の行為形式としての契約"が、具体的にどのような局面において、いかなる機能を果たしうるのか、その可能性を探りつつ、公私協働契約に妥当すべき法理論のさらなる深化と体系化を図りたいと考えている。
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