「公共的事務の民間委託手法としての行政契約に関する総合的研究」と題した本研究は、平成22年度から平成24年度までの3年間を研究実施期間とするものであった。 研究代表者は、本研究において、近年洋の東西を問わず先進諸外国において注目を集めている「公私協働現象」に焦点を当て、それまで国家(行政主体)が、官僚組織と公的資金を用いながら、単独責任のもとで実施・遂行してきた様々な公的任務(行政任務)が、「本来私的利益を追求する主体として公的任務の遂行過程から除外されてきたはずの民間法主体」に委任・委託されてゆく行政実務の実態を、つぶさに解明するとともに、公的部門と民間・私的部門とが当該協働関係を法的に構築する際に締結する契約(行政契約:協働契約)につき、欧州諸外国(とりわけ、この点に関して重厚な学術論議を展開してきたドイツ及びフランス)が、近年、どのような学術動向を展開してきたのかを紹介・分析し、以て、少子高齢化社会、経済の低成長時代にあって厳しい財政状況に於かれた我が国が、今後も増大し続けるであろう公的任務を、真に効率的かつ高水準で遂行してゆくための理論枠組みの一端を解明することに努めたところである。 本研究を通じて得られた学術的知見は、国内の各種研究会等で発表するとともに、拙稿「公私協働促進法の制定―競争的対話の導入を中心に―」自治研究86巻3号88頁以下109頁、同86巻4号60頁以下84頁(第一法規、2010年)及び「ドイツにおける公私協働論と行政契約論の発展・展開」岡村周一・人見剛編『世界の公私協働』(日本評論社、2012年)183頁以下195頁に、単著論文として公表を完了している。
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