研究課題/領域番号 |
22530037
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
下山 憲治 名古屋大学, 法学研究科, 教授 (00261719)
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キーワード | 医薬品 / リスク / 販売規制 / 通信販売 / 薬局 |
研究概要 |
本研究は、リスクの法的制御に関する研究の一環として、リスク行政の典型領域である薬事行政において、社会的・法的に管理すべきリスクと受容されるべきリスクとの境界設定のあり方を検討するものである。特に、医療用医薬品と一般用医薬品(第一類から第三類)の線引きやそれらのリスク評価という「医薬品自体に関する安全性の問題群」と、市販後の「医薬品の供給・流通に関する安全性の問題群」とを区別して分析を行う。そして、最近の薬事法改正により導入された一般用医薬品の販売規整について、EU法制及び明治期以降日本が一つの参考としてきたドイツ法制の現状に至るまでの歴史的経緯に関する実証的検討を通じて、日本における法改正を含めた、今後のあるべき規整を検討・提案しようとするものである。そして、平成23年度は、ドイツにおける研究者との連携・意見交換等を継続し、医薬品のリスク評価と供給・流通規整について、研究目的の一つであるドイツ法制の立法事実の明確化と実態把握のため、ドイツでの立法資料の収集したほか、ドイツ連邦健康省及び連邦医薬品・医療製品研究所(ドイツ・ボン市)において法改正前後に関する各種意見書や関係論文の収集等を行った。また、日本については、本研究課題の一つである郵便等販売方法(いわゆる通信販売)の規制に関し、一般用医薬品(第一類及び第二類)に関する東京地方裁判所判決(医薬品ネット販売訴訟:2010年3月30日判例時報2096号9頁)の分析・検討を行った。これら比較法研究及び判決の分析・検討結果は、「一般用医薬品の流通・販売規制に関する考察-医薬品ネット販売訴訟東京地裁判決を契機に-」として公表し、今後の検討課題も明らかにした。また、医薬品それ自体のリスクにかかわる薬事法における製造販売承認とその後に行われる流通段階での販売規制の双方が争われたイレッサ訴訟についても、二つの地裁判決が出されたのであわせて分析・検討を行い、「抗がん剤(イレッサ)添付文書の記載改訂を求める行政指導権限の不行使が違法とされた事例」として公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ドイツ及びEUにおける医薬品のリスク管理法制について、ドイツにおける歴史的経緯に関する分析・検討を加えたこと、日本での医薬品通信販売規制に関する地裁判決について検討を加えたこと、これらの点について論文として公表したこと、そして、医薬品それ自体のリスクに関する承認制度と流通に関わるリスクに対する販売規制についてイレッサ訴訟の東京地裁及び大阪地裁判決について検討を加えたことから、このように評価した。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、本研究の最終年度に当たるため、医薬品の郵便等販売方法(通信販売)の規制強化を行った日本の現実的課題と、通信販売規制を実質的には撤廃したドイツでその後生じている現実的課題の分析・検討を加えたうえで、医薬品リスクに関する今後のあり方について検討結果をまとめていく。
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