本年度は、医薬品の郵便等販売方法(いわゆる通信販売)について、EUおよびドイツ法制との比較検討を継続した。一方、日本については、近年のリスク論との関連を検討すると共に、一部医薬品の郵便等販売方法を禁止した省令が委任の範囲を超え、違法無効とした東京高等裁判所の判決等を分析・検討した。 まず、後者については、物質に関するリスクの法的制御という観点から、近年の動向を分析した。また前述の東京高等裁判所判決を評釈する予定でいたが、2013年1月11日に最高裁判決が出されたため、これを併せて行った。その成果は、平成24年度重要判例解説にて公表した。同高裁判決と最高裁判決では、一般用医薬品のうち、第一類・第二類医薬品の郵便等販売方法を禁止する省令の定めについて、委任の範囲を超えるとの結論は共通するものの、その理由づけの異同に着目し検討を加えた。 また、医薬品それ自体の安全性と流通過程における安全性(特に添付文書における副作用情報)の双方が争われたイレッサにかかわって、リスク管理、とりわけリスクコミュニケーションの視点から分析・検討した。 他方、前者について、ドイツでは、すべての医薬品の薬局による郵便等販売が許可制の下におかれ、許可を受けた薬局がドイツ郵便等販売方法許可薬局登録簿に登録し、それをインターネットを通じて開示することで、医薬品流通の透明性と信頼の確保を図ろうとしている。また、ドイツでは、処方せん医薬品も郵便等販売方法が認められているため、薬局以外でも処方せん医薬品引渡しが可能とする裁判例がある。しかし、連邦議会などでは安全性確保の面から禁止する動きも活発ではあるが、立法化にいたってはいない。この点は、日本とは制度が大きく異なってはいるものの、前述の最高裁判決後の規制見直しにあたって一つの論点となりうる。この点をまとめ、公表する予定である。
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