研究課題/領域番号 |
22530040
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
江島 晶子 明治大学, 法務研究科, 教授 (40248985)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 多層的人権保障メカニズム / ヨーロッパ人権条約 / 比較憲法学 / 最高裁判所 / ヨーロッパ人権裁判所 / 補完性 / 評価の余地 / 国際人権法 |
研究概要 |
本研究は、国際的にも国内的にも人権保障制度が構築されつつある現状を踏まえ、憲法の人権保障メカニズム(統治機構)と国際人権条約の人権保障メカニズム(各種国際人権機関)との多層的接合状況について比較法的実証的研究を行い、接合状況の違い(多層性の有無)が人権保障の実効性にどのように影響するのかを究明することを目的とする。とりわけ、本研究では、両メカニズムの接合が統治機構の諸原理に及ぼす影響に着目し、それを議会と裁判所の「対話」的関係として把握する可能性を視野に入れつつ、従来の権力分立モデルに対して、国際メカニズムとの接合を加えた新たなモデルを構築・検証し、権力分立原理の人権保障的再構成を試みる。 平成24年度は、前年度までにおこなった一般モデルの検証の補足を行うと同時に。国際人権保障メカニズムの実績と問題点が、憲法の人権保障メカニズムに与える影響の検討行った。具体的には、第一に、前年度までのフォローアップとして、イギリス、オーストリアを訪問し、それぞれ最高裁判所裁判官および憲法裁判所裁判官とのインタビューを行い、ヨーロッパ人権条約の影響度について、国内裁判官がどのように考えているのかについて知見を得ると同時に、憲法研究者、国際法研究者、弁護士に対するインタビューを行い、上記の知見を批判的に検証するための知見を得た。第二に、ヨーロッパ人権裁判所を訪問し、ブライトン宣言(二〇一二年四月)のインパクトを中心に、憲法メカニズムと条約メカニズムの緊張関係について調査を行った。 その結果として、ヨーロッパにおいては、憲法の人権保障メカニズムと国際人権保障メカニズムとは、各論レベルでは衝突が生じることがあっても、それを吸収しうる接合が実現されていること、よって、憲法と条約との関係性については、新たな理論が必要とされていることが実証できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の一般モデル(暫定版)の検証を、比較法実証的に計画通り推進させることができているため。
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今後の研究の推進方策 |
前述の一般モデル(暫定版)の検証について、一定程度実現することができたので、これれに基づき、憲法の統治機構の諸原理に対してどのような影響を与えているか、与える可能性があるかを明確にすると同時に、憲法と国際人権条約との関係性について、新たな理論の模索について道筋をつけ、新しい研究の礎とすることを予定している。
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