本研究は、民主主義のあり方として、日本において通常観念されている政治的な場面におけるそれとは異なる場面における、民主主義的制度として、社会的民主主義の検討を行うものである。本年度は、フランスにおける社会的民主主義(démocratie sociale)の実態について調査・検討を行った。本年度は、三年計画の最終年度に当たる。 フランスの社会的民主主義の基本的な考え方やその実際に関する文献を渉猟し、分析を行うに加え、年度後半においては、所属機関の在外研究制度を活用して、フランスに滞在して研究を進めた。フランスの社会的民主主義の基本的担い手は、労働者と使用者であり、そのことはフランスで労使双方を表す言葉として、partenaires sociauxという用語が現在でも使用されていることにも顕著に現れているが、実際にフランスに滞在することによって、とりわけ労働組合が相当大きなプレゼンスを持っていることがよく理解できた。この社会状況が、フランスにおいて社会的な民主主義という観念の成立を可能にしている。すなわち、政治的民主主義と区別される社会的民主主義とは、社会的な活動の中で具体的な立ち位置を持つ主体を基礎にして、民主主義的に運営されるシステムが存在するということを指すと言うことが分かった。 NPOを主体として民主主義を追求しようという営みも、同じ志向を持つものであるため、その追求のためには、その担い手としてのNPOがどのような存在であるのか、を明らかにする必要がある。しかし、資本との関係で階級的な対峙が明確な労働者と異なり、NPOの場合は、その団体の性格がまちまちでそもそも一義的に確定することが困難であるため、民主主義を提供する要素としてふさわしいかは不明である。この点について、論文を執筆した。
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