本研究は、国際法および国際組織法の視点から、国際組織およびその決定における合法性と正当性の問題を可能な限り体系的に検討するとともに、その分析・検討を踏まえて、国家中心的な国際法体系が国際組織を中心とする非国家主体を重要なアクターとして取り込むという国際法秩序の構造変動の動きを考察することが目的である。平成24年度に取り組む研究の前提として、既に、国際組織およびその決定における合法性の問題を、「国際組織はどのような法に拘束されるのか、特に人権規範に拘束されるのか」という分析視点から考察してきている。現在までにこの争点が特に議論されてきた領域としては、次のものを指摘できる。①平和(維持)活動の領域における人道法規範の適用可能性、②安保理の制裁と人権規範の適用可能性、③安保理決議に基づく暫定行政活動と人道法規範・人権規範等の適用可能性、④開発援助の領域における世界銀行・IMFへの人権規範の適用可能性。この研究の過程においては、国際法学会での研究報告において「Transitional Justice」(移行期正義)の実現の問題を検討した際に、安保理決議に基づく暫定行政活動と人道法規範・人権規範等の適用可能性の分析を扱った。 以上の各領域における実体的な検討を踏まえた上で、手続・制度の仕組みの研究に取り組み、各領域における国際組織の正当性向上に向けたアカウンタビリティーの分析・検討を進めた。特に、アカウンタビリティーという法的責任に限定されない広い概念に着目して、法の支配、政策決定における透明性、情報の公開とアクセス、国際公務員制度の効率的機能と腐敗の防止などの多様な論点に目配りして、総合的な把握を目指した。
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