私の研究課題は「国際テロ行為の容疑者に関する管轄権の展開とその国際協力に与える影響」である。この研究は、近年の国際テロ行為(テロリズム)の容疑者の審理・処罰をめぐる米国の法制度の展開とその国際法から見た問題点の明確化を、特に軍事審問委員会(military commissions)という制度を分析することを通じて行ったうえで、さらに、軍事審問委員会に代わる新たな法制度が国際協力に与える影響を考察することを目的とする。上記の「研究の目的」を達成するための研究計画の柱として次の3つを据えている。すなわち(1)米国の「対テロ戦争」における国際テロ行為の容疑者の処遇をめぐるこれまでの議論の整理、(2)(グアンタナモ基地収容所閉鎖以後の)新しい制度の分析、(3)新しい米国の制度に対応する国際協力の法的枠組みの考察である。今年度は特に(2)に関心を持って調査を進めてきたが、2009年の大統領令でいったん停止されていた軍事審問委員会が2011年3月7日の大統領令で再びその利用が決定された。つまりグこのことはアンタナモ基地閉鎖以後の「新しい制度」というものは構築されないことを示し、次年度からの研究計画を変更する必要が生じた。(3)については特にヨーロッパの理論状況を検討することが重要と考え、ドイツ・ケルン大学の法律学専門家と協力して議論を深めてきた。ただし23年3月に予定されていたドイツ人研究者の招へいは東日本大震災のため中止となり、その代わり23年9月、24年3月にこちらがドイツを訪問し、調査を行った。
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