研究課題/領域番号 |
22530048
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
洪 恵子 三重大学, 人文学部, 教授 (00314104)
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キーワード | 国際テロ行為 / 軍事審問委員会 / グアンタナモ基地 / military commission / テロリズム / military detention |
研究概要 |
私の研究課題は「国際テロ行為の容疑者に関する管轄権の展開とその国際協力に与える影響」である。この研究は、近年の国際テロ行為(テロリズム)の容疑者の審理・処罰をめぐる米国の法制度の展開とその国際法から見た問題点と意義を明らかにすることを目的とする。この研究の目的を達成するために当初研究計画として3つの柱を設定した。すなわち(1)米国の「対テロ戦争」における国際テロ行為の容疑者の処遇をめぐるこれまでの議論の整理、(2)(グアンタナモ基地収容所閉鎖以後の)新しい制度の分析、(3)新しい米国の制度に対応する国際協力の法的枠組みの考察である。しかし昨年度の研究から明らかになった通り、当初予想していたような新しい制度の構築は事実上見送られたため、(2)については別の角度から検討することにした。つまり新制度ではなく、すでに試みられている方策の法的問題点を明らかにすることを目指した。つまり(1)米国本土に移送して米国裁判所で刑事裁判にかけること、(2)(改正された手続きに基づいて)軍事審問委員会で審理すること、(3)軍事的拘束(military detention)、(4)国籍国その他の外国に帰還させること、というこれらの実際に行われている活動について、調査・分析を行った。グアンタナモ基地での収容開始から10年を迎えた2012年初めには被拘禁者の数は約170名と減少したことが伝えられており、そうだとすれば今年度判断した通り、新しい制度の構築は行われないとの前提で、来年度も研究を進めたいと考えている。他方で一国の国内法上の制度を通じてではなく、国際組織(国際(刑事)裁判所)において容疑者の審理・処罰を行うことも近年の国際社会では強く求められており、したがってこうした動きをも注視しながら研究を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
検討の対象となる米国政府の政策に関して重要な変更があったため、それに関して裁判例や学術論文さらにはインターネットのブログなどで議論が予想以上に大量に展開していて、整理に時間がかかるため。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は最終年度に当たるため、研究の総括を行い、論文執筆に集中したい。しかし現在進行中の米国の政策の国際法上の問題点を研究対象の重要な柱としているため、方向転換を否応なく迫られることがあったし、今年度も予想外の展開があるかもしれない。その場合はこれまでの検討で明らかになった段階までを整理することで一定の成果を上げたいと思っている。
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