研究課題/領域番号 |
22530050
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
道垣内 正人 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (70114577)
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キーワード | 国際裁判管轄 / 仲裁 / 専属管轄 / 仲裁付託適格性 / 公序 |
研究概要 |
本研究は、国際的な民事又は商事に関する私人間の紛争の解決手段としての訴訟と仲裁に対して、国家の国家法秩序を維持するという国家利益の観点からの介入について考察することにより、国際民事手続法にふさわしいしっかりした体系を構築することを目指ている。この目的に鑑み、本年度は基礎的な研究を行った。 具体的には、国際裁判管轄に関する民事訴訟法等の一部改配法が2012年4月に施行されるのを控え、その全体像を把握すべく内外の文献や裁判例を踏まえ、複数の論文文等の執筆を行った。特に、国家利益という観点から、専属管轄規定について研究を行った。日本においては、会社関係訴訟、登記・登録関係訴訟、登録により発生する知的財産権訴訟(侵害訴訟は除く)の3つの類型についてのみ専属管轄とするのに体して、欧州では、不動産物権関係訴訟についても、その所在地国の専属管轄とし、また、欧州でもアメリカでも、特許侵害訴訟についても登録国の専属管轄とする裁判例が最近出されており、日本法が専属管轄について相対的に緩やかな考え方を持っていること、そのことの当否をさらに検討すべきことが特定された。 仲裁については、ドバイで開催された国際法曹協会の研究大会に出席し、仲裁をめぐる最新の動きに触れることができた。そして、当事者選定仲裁人の独立性ついてのパネルディスカションでは、私人である仲裁人が国家から既判力を与えられるような法的判断するという仲裁という制度の枠組みと、当事者による自治を広く認めるという考え方の葛藤がいまだ未解決であることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は墓礎的な研究を目的としていたので、専属管轄規定を含む新規立法の全体的な研究を行うことができたことにより、その目的は達成されたと考えている。仲裁については、日本での実際の案件が少ないことから、国際学会での議論に触れることが問題の核心を把握するのに適しており、それを行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、本年度の研究を踏まえ、さらに、専属管轄規定の位置づけについて研究を深め、これを突破口として、国内管轄ルールとは異なり、国際裁判管轄ルールについては、国家利益がいかに影響を与えているかを見極める糸口とすることを予定している。仲裁についても、国家の仲裁法と仲裁機関の仲裁規則との開係等の検討を通じて、国家法秩序として、いかなるルールを強行規定とし、どのように仲裁を規律しようとしているのかを見定め、国家法秩序との関係を考えることを予定している。
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