研究課題/領域番号 |
22530051
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
萬歳 寛之 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (10364811)
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キーワード | 国際公法 |
研究概要 |
本研究の目的は、国際法違反に対する国家責任制度(一般法)と条約ごとの違反対応制度(特別法)の関係性を考察し、かつこれらの制度の立法過程の特質を検討することを通じて、国際法の規制力のあり方を検証する点にある。 これまで、国連国際法委員会を通じて作成された国家責任条文(2001年)を中心的検討素材とし研究を進めてきている。国家責任条文は国連国際法委員会により一般法上の国家責任制度の草案として作成されたものであるが、同条文を実際の紛争解決において国家責任法を適用してきた常設国際司法裁判所及び国際司法裁判所の判断と対比しつつ、その実際的有用性について検討を行った。この検討により、国家責任条文には損害と責任の効果との関係性の捉え方について問題点があることが明らかとなった。また、この問題点は、環境条約等の国際社会の一般利益を規定する条約違反の場合も一般法の適用対象としようとする国家責任条文の態度に由来するものであることが確認された。あわせて、一般法上の国家責任制度と条約ごとの違反対応制度の関係性を検討していく際には、違反が問題となっている義務が二国間義務か対世的義務かだけでなく、義務の内容を特定するのに静態的アプローチが認められるのか、それとも動態的過程のなかで義務の内容が変遷していくのかという点も含めて、国際義務の性格を分類していかなければならないことが明らかになった。 こうした静態的・動態的規範の分類は、当該規範の立法や履行確保制度のあり方に決定的な影響を与えるものと考えられ、規範の性格の相違に着目した国際立法のあり方について考察していくべき論点が見えてきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
国家責任条文の問題点の中核を実証的に示すために、関連判例や学説を渉猟して、実際的有用性について一定の結論を導くのに時閤がかかったため、当初の研究計画より研究の達成度が遅れることになった。また、この結論が国際法違反に対する一般法上の制度と条約ごとの特別法上の制度との関係性を考えるうえでも不可欠の論点につながっていることの実証にも時間がかかったこと達成度の遅れと関係がある。
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今後の研究の推進方策 |
まず、損害概念と責任の効果の関係性という国家責任条文が抱えている問題点の中核を示すために論文としてまとめ、2012年度中にこれまでの研究成果の一部を発表する予定である。次に、これまでの研究成果を踏まえたうえで、国際義務の性格に応じた国際立法の特質と履行確保制度のあり方について本格的な研究を開始し、立法-規範の実施-違反への対応というプロセス全般を把握することで、国際法の規制力を確保するために必要な諸条件とは何かを解明することを目指す。
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