本年度は、欧州評議会各政治的機関(閣僚委員会及び議員総会)による判決執行監視システムに関する分析を行うための資料の収集及び整理を行った。その点に関して2009年6月に欧州評議会閣僚委員会における判決執行監視システムに関する覚書が発表され、システムの整理が行われたばかりであり、現在においても改善の模索をしている状況である。2010年においてもその具体化と修正にかかる検討が行われている。 こうした現在進行形の状況を、欧州評議会事務局関係者に話を伺いつつ、また資料を収集する中で、現状をある程度整理することができた状況である。それによって、一定の問題点も明らかになりつつある。判決執行と欧州評議会機関の現状の関係につき、これまでの状況を踏まえて整理をしたものを脱稿しており、2011年度中に公表する予定である。これは、欧州人権条約の実効的な遵守を、判決履行の観点から、その政治機関の役割に着目したものである。さらに判決内容の変化と条約規定から、欧州人権条約における判事事項の変化(パイロット判決手続きなど、個別的救済措置から一般的救済措置への変化)を根拠づける関連規定の解釈に関わる基本的な整理を、判例を通じて進めつつある。 この解釈が、人権裁判所と締約国、閣僚委員会など欧州評議会政治的機関の関係を変化しつつある現状に、一定の法的根拠を与えるものとなっており、その点の整理を中心にして研究を進めた。 また、欧州人権条約の規定外の人権問題を包含しつつある現状があるが、その問題を対象とする他の機関(欧州社会権委員会など)との関わりについても、考察する機会を持ち、それをまとめた。
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