本年度は引き続き欧州人権裁判所判決の執行監視に関わって、監視システムを数度にわたり改編し、これを判決執行の促進とその課題の明確化を図る取り組みが現在においても行われていたことについて、欧州評議会及び欧州人権裁判所関係者に話を伺いつつ、また資料を収集してきた。 インターラーケン、イズミールそしてブライトンと続く会合の中で、欧州人権条約システムの中で補完性原則が強調され、国家の役割が重視されるようになっている。これは、判決の執行に対する国家の自主的な遵守を確認するものであるといえる。他方で、評価の余地を欧州人権裁判所に自覚させ、国家が受忍範囲を超える欧州人権裁判所による人権基準の発展を抑制しようとの思惑もでている。 閣僚委員会による執行監視は、条約上において根拠をもつが、議員総会は、判決執行には直接関与する機関としては存在していない。しかし、議員総会は、その性格上、国際機構の政治的一機関の役割だけでなく、国内議会と密接な関係を持っている。このことが、行政府側の機関(政府と閣僚委員会)に対する立法府の役割を再認識させ、欧州人権裁判所判決の執行及びその監視に対する役割に注目されるようになっている。とりわけ、ロシア議会の反対によって第14議定書の発効が遅れた事情も踏まえ、欧州人権裁判所への付託件数の多い、ロシア/ウクライナ/トルコ/ルーマニアに対して、議員総会の中での判決執行に対する努力に向けた対話アプローチが行われている。
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